Technologyテクノロジー

iPS-NKTとは

ナチュラル・キラーT(NKT)細胞は、T細胞、B細胞、ナチュラル・キラー(NK)細胞等の「リンパ球」の一種で、NK細胞とT細胞の特徴を併せ持ち、1986年に谷口克氏(当時:千葉大学医学部教授)らによって発見されました。

NKT細胞の最大の特徴は、がん細胞を直接殺傷する能力をもつとともに、他の免疫細胞を活性化することによりがん細胞を間接的にも殺傷する能力をもつことです。

多面的な抗腫瘍効果をもつものの、T細胞やNK細胞と異なり、ヒト末梢血中のT細胞のわずか0.01~0.1%程度しか存在しないため、NKT細胞を体外に取り出し、細胞医薬としてがん治療に必要な細胞数まで機能性を保ったまま培養・増殖させることが非常に難しいという課題がありました。

そこで国立研究開発法人理化学研究所(以下「理研」)では、生命医科学研究センター副センター長の古関明彦氏を中心に、この課題を解決する方法として、iPS細胞技術を用いることが計画されました。具体的には、NKT細胞を初期化して樹立したiPS細胞(NKT-iPS細胞)から再度NKT細胞(iPS-NKT細胞)に分化・誘導可能なことが示され、2010年、iPS細胞から抗腫瘍活性を備えたNKT細胞だけを大量に作り出すことに成功しました。

iPS-NKT細胞の薬効増強、機能亢進、動態改善等を目指して、遺伝子改変iPS-NKT細胞の開発を推進しています。取り組みの一例として、キメラ抗原受容体(CAR)導入iPS細胞から抗腫瘍作用が増強したCAR-iPSNKT細胞への分化誘導に成功しています。さらに、種々の遺伝子改変細胞の開発を進めています。

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