作製したCAR-iPSNKTがin vivoで抗腫瘍効果を示したー第38回米国がん免疫療法学会(2)
-iPS-NKTについて
iPS-NKTは、人工多能性幹細胞(iPS細胞)から作製するナチュラルキラーT(NKT)細胞です。これに、がん細胞が特異的に細胞表面上に発現する抗原(がんの目印)を認識するセンサーであるキメラ抗原受容体(CAR)遺伝子を導入してCAR-iPS-NKTを作製します。このiPS-NKT細胞をプラットフォームとして、様々ながん細胞が発現する標的分子を認識するキメラ抗原受容体(CAR)を組み込んだCAR-iPSNKTを様々ながん種に対する治療薬として開発していこうとしています。
-発表のポイント
昨年の米国がん免疫療法学会(SITC2022)では、当社が世界で初めてiPS-NKTからCAR-iPS-NKTを作製し、in vitroで抗腫瘍効果を示したことを報告しました。このときは、血液がんの標的となるCD19と、固形がんの標的となるHER2に対するCARを組み込んだCAR-iPSNKTを用いました。
今回の米国がん免疫療法学会(SITC2023)では、iPS-NKT細胞をプラットフォームとする展開でプロトタイプとして作製したHER2 CAR-iPSNKT)の抗腫瘍効果を、in vivo(HER2発現ヒト腫瘍細胞移植マウスモデル)で確認できたことがポイントです。このマウスモデルにおける抗腫瘍効果を裏付けるCAR-iPSNKTによるサイトカイン産生も確認しました。
-今後の展望
これは、iPS細胞から作製するNKT細胞を用い、遺伝子編集によりCARを組み込むことによって、本来NKT細胞がもつ多面的な抗腫瘍効果を増強させることを確認した世界でオンリーワンの研究報告であり、今開発が進められている他家CAR-T細胞療法を次のステージに進めるためのプラットフォームを構築できたと考えています。