BP1202-NF2に関する非臨床研究データ-第37回米国がん免疫療法学会(1)
今回のBrightPath通信では、2022年11月8日から12日にかけて米国ボストンで開催された第37回米国がん免疫療法学会(Society for Immunotherapy of Cancer:SITC 2022)年次会議で発表したBP1202-NF2に関する非臨床研究データの概要をインタビュー形式でご紹介します。
BP1202-NF2に関する学会発表をとりまとめた三重元弥さんです。
-今回の発表のポイントは何ですか?
三重 PD-1抗体に代表されるがん免疫治療薬は、抗腫瘍効果をもつT細胞に代表される免疫細胞に発現し、免疫細胞にブレーキをかけてしまうPD-1のような分子を認識して結合し、免疫細胞は残したまま抑制性分子が働かなくなるようにする作用メカニズムのものが多いです。当社で開発を進めていた抗CD39抗体「BP1202」も、免疫抑制を促す酵素機能をもつCD39という標的分子に結合し、その分子の機能を止めることを図る抗体でした。一方がん組織の中には、細胞そのものが免疫抑制機能しか持たなくなっている細胞が存在しています。代表的なものに、免疫抑制性の制御性T細胞(Treg "ティー・レグ")があります。今回私たちは、非小細胞がん患者さんの末梢血とがん組織を調べ、がん組織にいるTregがCD39を発現亢進していることを突き止めました。そこで、BP1202抗体に改変を加え、Tregに代表されるCD39高発現細胞そのものをダイレクトに殺傷する「BP1202-NF2」を創製しました。開発で先行する他社の抗CD39抗体は、みな前者のCD39酵素を阻害するものです。BP1202-NF2は、この酵素阻害活性に加えて、抑制性の免疫細胞であるTregを選択的に除去する細胞傷害活性を有することが、最大の差別化ポイントです。
BP1202-NF2が抑制性の免疫細胞Tregを強力に排除することで、がん細胞を殺傷する免疫細胞であるキラーT細胞が増強され抗腫瘍活性を発揮することも示しました。
-今後の計画・展望は?
三重 がん治療においてがん組織におけるTregの存在が治療後の経過を左右する予後不良因子であり、腫瘍環境でTregを始めとする各種細胞におけるCD39の発現が亢進しているがんにおける臨床応用を目指して研究開発を進めていく方針です。当社はほかにもCD39の仲間であるアデノシン経路を阻害するCD73を阻害する抗CD73抗体、がん免疫を抑制する免疫チェックポイント分子TIM3を制御するバイパラトピック抗体、CD39とTIM3を同時に阻害できる二重特異性抗体など、他社にはない特徴を持ったユニークな抗体医薬品を複数開発しています。これらの開発品を1日も早く、がんに苦しむ患者様のもとへ届けるべく、研究開発にまい進して参ります。
-最後に仕事から離れて、三重さんが最近関心を持っていることはありますか?
三重 三谷幸喜さんが脚本を手掛けるNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」にはまっています。回を追うごとにダークサイドに落ちていく主人公と毎週繰り広げられる救いのないエピソードに、どうして自分は鎌倉時代の心配をこんなにしているのだろうと脱力するのですが、最終回にきっとカタルシスが用意されているに違いないと視聴し続けています。中毒です。